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最高裁判所第三小法廷 昭和35年(オ)549号 判決 1963年5月21日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人大内省三郎の上告理由第一点について。

借地法第七条は建物の滅失原因についてなんら制限を加えていないこと、同条は滅失後築造された建物の利用をできるだけ全うさせようとする趣旨であることにかんがみれば、同条にいう建物の滅失した場合とは、建物滅失の原因が自然的であると人工的であると、借地権者の任意の取毀しであると否とを問わず、建物が滅失した一切の場合を指すものと解するのが相当である。とすれば、原審が、本件バラツクの取払いに関して確定した諸般の事情のもとで、本件バラツクの取払いは同条にいう建物の滅失にあたるとしたのは正当である。所論は、右と異なつた見解に立つて原判決を攻撃するにすぎないから、採用できない。

同第二点について。

一箇の借地契約に基づいて借地上に建物が存在する場合には、その建物の敷地が当該借地の一少部分であつても、その敷地についてのみ借地法七条を適用しなければならないものではなく、当該借地全体について同条が適用されるものと解するのが相当である。所論は、独自の見解に立つて原判決を攻撃するにすぎないから、採用できない。

同第三点について。

所論のように、貸主である控訴人(被上告人)が賃貸土地を借主である被控訴人(上告人)に使用させなかつたとしても、本件賃貸借の期間は法律上当然に延長されるものではない旨の原判示は、正当である。所論は、ひつきよう、独自の見解に立つて原判決を攻撃するに帰するから、採用できない。

同第四点について。

借地権消滅の際借地権者が借地上に建物を所有しない場合には、その理由がどのようなものであるかを問わず、借地法第四条が適用されないことは、同条の法意に照し、明らかである。そして、本件土地の賃借人である上告人が本件賃貸借の期間満了の際本件借地上に建物を所有していなかつたことは原審の確定するところである。したがつて、本件賃貸借の終了については、同条を適用する余地はないものというべきである。所論は、ひつきよう、右と異なつた見解に立つて原判決を攻撃するものであるから、採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 河村又介 裁判官 石坂修一 裁判官 横田正俊)

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